するりぃと

後ろ髪引かれ隊!みたいな名前が、最初の特許申請時の名称だった。
ちなみに、私には後ろ髪がない。そんなことは、置いといて(笑)

小さめのペットボトルに、糸を何気なく巻いてみた。これがきっかけ。
ちょうど、このペットボトルと紙管のサイズが同じだった。
遊び心から、ワインダーにペットボトルを付けて糸を巻いたところ、巻けた。紙管でいいのだが、遊び心だ。
何の意図もなかった。何本も巻いた。
糸のお尻がもぞもぞとだらしない。それぞれのペットボトルの口にお尻の糸を入れ、蓋をした。
すっきりと納まった。
後日、ペットボトルの下部に穴を開けた。何気なく開けた。この穴から取り出すと、・・・。
おぉ~、おぉ~、おぉ~、面白いじゃな~ い!ペットボトルが動くので、中にビー玉を入れた。
床に滑り止めのマットをひいた。
ペットボトルの口から糸が入り、下から出てくる。
いいじゃん!いいじゃん!

これで終わっていたら、ブログの面白グッズのネタに埋もれていたのだが…

ある日、尾張繊維試験場での世間話で「面白いこと思い付いた!俺って天才!?」などとおどけていた。
それを聞いた担当者が一言、「刈谷のあいち産業科学技術総合センターで勉強会があるから行って来ると良いよ」と言われた。
プロダクトデザインセミナーと銘打った勉強会だ。聞くだけの勉強会ならと、申し込んでもらったところ、なんと、話が違う。この内容について参加者の前でプレゼンテーションをするとのこと。
いやいや、パワーポイント?なにそれ?の私。
慌ててパワーポイントを学び、その時思っていたことを無造作に並べた。手芸糸に対する想い、業界の将来への不安、糸作りの工程への疑問など。もっと手芸糸を身近に!を、一番の柱にした。
プロダクトデザインセミナーには、各種業界の大手業者さんも含め10 社ほど参加した。審査・指導は大手プロダクトデザイン会社社長及び担当者さん。
会の終了後、担当者がわざわざ面白いと伝えに来てくれた。愛知県のセミナーだったので、無料で2回の個別相談が実施された。
小川染色まで出向いてくれた担当者さんは、この商品の製品化を強く勧めてくれた。
じゃ、御社でお願い。と言ったところ「うちは高いよ。
もうちょっと自分で考えて」とにべもない( 笑)

時を同じくして、ひょんなきっかけから以前少しだけお世話になった弁理士さんに再会した。
特許などの申請をお手伝いしてくださる「弁理士」さんだ。
偶然の出会いに、一度お茶でもとなり近況報告。
ここでも、「褒められちゃった」と自慢顔したところ、「特許申請しましょう!」と背中を強く押してくれた。
いやいや、こんな誰でもできるようなことで特許なんて、もってのほか。お金もないし。
「じゃ、補助金を申請しましょう。何なら、展示会でばぁーと、お披露目しましょう。」
おだてられれば、何処にでも登ってしまう私。
形にもなってないのに、メッセナゴヤ出展を決めてしまった。
メッセナゴヤが偉大な展示会だという意識もなく、軽く決めてしまって、この時はどれだけ後悔したことか・・・、とほほだった。

知り合い総動員だった。お願いの毎日。
こんな感じが欲しい。こうなったら、いいな。丸太を拾ってきて、近くの機屋さんが持っていた木工旋盤の使い方を教えてもらい、イメージを形にした。こうして、原型ができた。
申請した補助金を使わせていただき、試作品を次々に作成した。木工品・樹脂製品・陶器・木工民芸品まで、知り合い伝言ゲームのように話が伝わり、素晴らしい作品が出来上がった。

名称を「するりぃと」と決め、登録商標・意匠登録をした。
初めての展示会への出展。会場に飾るだけでは、インパクトが弱い。スムーズにこの装置が体験できるようにと、おみくじ方式を考えた。
テーブルの上にするりぃとをたくさん並べ、手前に取り出した糸をまとめて置いておく。
そこから1本引くと、どこかのするりぃとが動き出す。そこに、大吉などと明記して、おみくじにしたのだった。
これが、意外にも盛況だった。このアイディアも遊び心全開だった。
しかし、この遊び心がのちの販売に大きな力になるとは、この時はまだ知らなかった。

次の挑戦は、2019 年6 月名古屋ハンドクラフトフェアに出展。量産品を手配して、取扱説明書を作り、パッケージング。
この時はまだ大変お粗末なものだった。出展2 週間前に、メンバー全員でするりぃとの使用感を再度検証した。
ここで、不具合発覚。タテ型するりぃとの糸が残り少なくなると、糸が取り出せなくなった。
青くなりながら、改良品を考えた。メンバーの脳みそ細胞の総動員だった。
決定的な解決策を見いだせないまま、ハンドクラフトフェアが始まった。
残念だが販売は控えめにし、するりぃとのコマーシャルに終始した。
この不具合も8 月末には解消した。タテ型するりぃとの上部部品の穴の形状を工夫した。
糸が引っかかった時、回転方向と糸方向に部品が動くようにしたのだった。これにより、スムーズに取り出せるようになった。

その後の挑戦は、クラウド・ファンディングだった。
商品情報を拡散し、商品を売ることの大変さを改めて感じた。
ここでも、多くの協力者により目標を達成した。ほんとに私は、人に恵まれていると思う。
繊維技術センター・商工会議所・同業者・中小企業家同友会・銀行・業界新聞・・などなど。
プレスリリースについても、ご指導いただいた。地域ケーブルテレビに出演も決まった。
その都度、拙い文章を作り、恥ずかしい思いもするのだが、その作業は、いつも楽しい。

2020 年4 月末日、かわいい箱に収めることもでき、自信を持ってお届けできる商品として「するりぃと」が出来上がり、出荷しました。
今後は、小川染色㈱から旅立った「するりぃと」が、それぞれの場所で多くの人の楽しい時間のお手伝いが出来れば、こんな嬉しいことはありません。皆さま、是非、楽しんでください。

染色職人が作りました

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